平成24年7月九州北部豪雨(2012年)
専門家からのアドバイス
この災害で学ぶべき教訓は何か、専門家が解説します。
生活道路が脅威となる可能性も。河川が溢れ大被害に
福岡県八女市、大分県日田市・竹田市、熊本県阿蘇市などの山間部を中心に、観測史上最大の降水量を観測。各地で土砂崩れが起き、複数の河川が氾濫しました。氾濫の大きな要因としては流木の集積が挙げられます。
玉来川にかかる橋長60.8mの阿蔵新橋(竹田市)付近は、大量の水を受け流せる大きさであるにもかかわらず、流木の集積が浸水被害の拡大の一因となりました。多くの流木が水路を塞いだため、行き場を無くした水と土砂が住宅地に流れ込んだのです。今まで溢れたことのなかった大きな河川でも、脅威となる可能性が十分にあります。
今回の水害を受けて、竹田市では安全性を考慮し、一部の橋の撤去を決行。生活道路として利用されていた阿蔵新橋もその対象となりました。また、川沿いの人工林伐採も注目され、広葉樹の自生を促す活動も行われました。
事前にできる対策としては、自分のいる場所や地形を把握し、起こりうる状況に備えておくこと。日頃から避難場所の確認や、災害時の行動を決めておくことをおすすめします。また、必ずしも自宅にいるときに被害に遭うとは限りません。避難場所に関しては、数カ所ほど押さえておくといいでしょう。
近隣の河川や降雨量に大きな異変がなくても気を緩めず、状況の判断に努めることが大切です。遠くの川が溢れ、浸水してくる場合もあります。早急に避難するのが最善の手段です。
- 小松 利光
- 九州大学 名誉教授(河川工学) 日本工学会副会長 土木学会特別上級技術者(流域・都市)
- 河川工学・環境水理学を専門とし、各地で起こる水害の調査・研究を行う。「平成24年7月九州北部豪雨」「平成29年7月九州北部豪雨」では、基礎調査と各災害の発生機構の解明を目的に組織された土木学会調査団団長ならびに顧問として、現地調査に注力した。