平成23年7月新潟・福島豪雨(2011年)
2011年(平成23年)7月27日から30日にかけて、新潟県と福島県では記録的な大雨に見舞われ大きな被害が発生、「平成23年7月新潟・福島豪雨」と命名された。
日本海から東北地方南部にかけて停滞する前線に向かって暖かく湿った空気が流れ込み大気の状態が不安定となった影響で、新潟県から福島県会津地方にかけてはレーダー解析で1時間に100mmを超えるような猛烈な雨が続き、記録的短時間大雨情報が相次いで発表された。期間総降水量はアメダス観測地点で所によって700mm以上、レーダーによる解析では新潟県三条市と福島県只見町で1,000mmを超えた地域もあったとされる。これはこの地域の7月の平均降水量の2倍以上に相当する。
この豪雨で、新潟県から福島県会津地方にかけて堤防の決壊、河川の氾濫が相次ぎ、死者・行方不明者6人、損壊・浸水家屋10,000棟以上の大きな被害となった。また、JR只見線は橋梁の流失などの甚大な被害を受け、現在も福島県内の一部区間で運転できない状態が続いている。
専門家からのアドバイス
この災害で学ぶべき教訓は何か、専門家が解説します。
ハザードMAPを活用し、住む土地のリスクを知る
「平成23年7月新潟・福島豪雨」では死者4名、行方不明者2名(平成23年12月16日18時00分時点、消防庁発表)、損壊・浸水家屋が10,000棟以上という、大きな被害が出ました。しかし一方で、局地的な雨量が平成23年よりもかなり少なかった平成16年の新潟・福島豪雨と比べると、被害は小さく済んだとも言えます。平成16年の豪雨では、死者16名(平成16年9月10日15時00分時点、消防庁発表)、損壊・浸水家屋は14,000棟以上。エリアが多少異なるとはいえ、人的にも建造物的にも、平成16年を下回ったのです。
平成23年の被害が少なく済んだ、大きな要因の一つが堤防の存在です。平成16年の際に決壊した場所はしっかり修復済み。平成23年の豪雨では、河川内の被害はあったものの、先の災害を受けて修復された堤防が壊れることはなく、被害の拡大を防ぎました。
今後の日本の課題としては、ハザードMAPが挙げられます。河川を大雑把に分けると、大きな河川は国、支川は都道府県、下水は自治体と、その管理者が異なります。ハザードMAPは本来、利用者の利便性を勘案し、各管理者が持つ情報を統合して作成されるべきものであると考えますが、ほとんどの地域でできていません。管理者間で一層連携することで、人々が得られる情報がより正確なものになります。また、病院など、重要な施設を高所に設置することなども大切です。被害を軽減することと同様に、被害から復旧しやすいインフラ整備も大切なのです。
一方で、今を生きている我々は、各自でどのような対策ができるのか。理想を言えば「浸水しやすい場所には住まない」。みんながそうするには日本は狭く、現実問題として難しいですが、現行のハザードMAPでも、自分が住んでいるエリアのリスクを把握することは可能です。また、家を立てる際には施工主とリスクを共有するなど、災害を想定するのも、各自でできることではないでしょうか。また今日では、雨の降り方が変わってきています。そのため「自分が住んでいる場所はこれまで雨の被害がないから安心」という考えを持っているのならば、それは非常に危険なことだと言えます。
- 湧川 勝己
- 一般財団法人 国土技術研究センター 常任参与/京都大学防災研究所 客員教授
- 工学博士としての観点から、社会資本の保全や整備の重要性を研究。平成23年7月新潟・福島豪雨においては、財団法人国土技術研究センターが実施した現地調査に、副総括として参加した。
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