明治三陸地震(1896年)
専門家からのアドバイス
この災害で学ぶべき教訓は何か、専門家が解説します。
揺れが小さいから…では、決して安心できない
明治三陸地震の特徴は、地震の揺れの規模の割に大きな津波が起こる「津波地震」であることです。現在の震度にして2~3と揺れが小さいにも関わらず、最高で38メートルもの打ち上げ高を記録するほどの大きな津波が、青森県から宮城県までの沿岸部を襲いました。
津波は、断層破壊によって海底の地盤変動が生じることで起こります。急激に地盤が変動する通常の地震に比べて、ゆっくりと長時間続く「津波地震」は、「揺れは小さいけれど津波は大きい」というもので、その代表がこの明治三陸地震津波なのです。
当時は津波の警報もありませんでしたので、人々の意識として、地震の揺れの大きさが津波襲来の判断基準となっていました。揺れが小さかったこの地震では、発生後すぐに逃げる人がいなかったため、被害が大きくなったといわれています。この津波で亡くなった方は、わが国の津波災害史上最大の22,000人に上ります。
実は、明治三陸地震から100年以上経った今でも、津波地震かどうかを短時間で正確に判断することはできません。まだまだ発展途上の技術で、広帯域地震計で「揺れは小さいけれど、断層のずれは大きい」と分かる程度。揺れは小さいのに津波警報が発令されたり、地震発生から数分で津波が襲ってくる場合もあります。ですので、少しでも揺れたら沿岸部にいる方はすぐに逃げるという心構えが必要です。
- 越村 俊一
- 東北大学 災害科学国際研究所 教授 博士(工学)
- 専門は、津波工学。地域の災害に対する脆弱性を評価し、有効な減災策を社会に提案している。2016年、日本シミュレーション学会賞。総務省東北総合通信局長表彰、ジャパン・レジリエンス・アワード優秀賞を受賞。
参考資料
- 国立天文台『理科年表 平成28年』(丸善出版)
- 内閣府「1896 明治三陸地震津波(災害教訓の継承に関する専門調査会報告書)」