広島市で大規模土砂災害(2014年)
この災害の記録写真
専門家からのアドバイス
この災害で学ぶべき教訓は何か、専門家が解説します。
土石流が発生しやすい地域があることを知っておくべき
記録的な大雨が降った丘陵地には、風化が進み崩れやすくなった「広島型花崗岩」が堆積していました。大雨の結果、斜面の表土層が崩落する「表層崩壊」が多発し、大規模な土石流につながったと考えられます。また、土石流などが起きた場合に住民に危険が及ぶと推測される「土砂災害警戒区域」「特別警戒区域」への指定が遅れていたため、周囲の危機管理意識は高くなかったとされています。さらに、土砂や土石を防ぐ砂防施設を未整備のまま、住宅地の開発を進行したため、大きな被害へとつながりました。
国土交通省はこの災害を受けて「土砂災害防止法」を改正しました。警戒区域指定の遅れなどを防ぐため、土砂災害危険箇所の基礎調査を終えた段階での結果の公表と、都道府県から市町村への土砂災害警戒情報の提供を義務付けました。
私たちにできるのは、今住んでいる場所の特徴を把握し、起こりうる危険を知る努力をすること。そこで役立つのがハザードMAPです。土砂災害の恐れがある区域や避難所の位置を知ることができます。加えて、雨雲や雨量を見られるアプリを利用すれば、天気の変化に対応した事前行動が可能です。集中豪雨の予報があれば、降りそうな地域とその危険性を確認。テレビやネットから受信した情報と、自分の目で見た情報をすり合わせ、もしもの災害に備えましょう。
いち早く危険を察知することも重要になってきます。県や市が災害情報をメールで発信するサービスを活用するなどして、状況を把握し、身の安全を図ってください。
- 河原 能久
- 広島大学 大学院工学研究科長/工学部長
- 土木工学、水工学を専門とし、河川環境、洪水、豪雨、流域の水循環解析など多岐にわたり研究する。平成26年8月に広島市で起きた土砂災害では、水工学委員会災害調査団の団長として現地へ赴き、原因解明に努めた。
参考資料
- 内閣府「平成26年8月20日に発生した広島市土砂災害の概要」