平成28年熊本地震・本震

熊本で震度7の地震:熊本城で大きな被害 提供:児玉千秋/アフロ

 2016年(平成28年)4月16日1時25分頃、熊本県熊本地方を震源とするマグニチュード7.3、最大震度7の地震が発生。熊本県益城町、西原村で震度7を観測した。2日前の4月14日に発生していた最大震度7の前震に続く本震と見られ、同一地域を震源とする一連の地震活動で震度7を複数回観測したのは初めてのこととなった。

 震度7を観測した熊本県益城町、西原村をはじめ、熊本地方の広い範囲で多くの家屋が倒壊したほか、南阿蘇村で大規模な土砂崩壊が発生するなど、熊本・大分両県で大きな被害となり、2016年12月までに死者161人、負傷者2,692人、家屋被害は190,000軒以上にのぼった。

 また、大きな余震が続いたことで、屋内を避け車中泊で避難生活を送る被災者が相次ぎ、これによる静脈血栓塞栓症(エコノミークラス症候群)の発症や、地域の防災計画の未整備などが課題となった。

専門家からのアドバイス

この災害で学ぶべき教訓は何か、専門家が解説します。

想定外の2度の震度7、前震で救われた命

 2016年4月16日1時25分に発生した、益城町と西原村で震度7の揺れを記録したマグニチュード7.3の地震です。益城町は28時間前に発生した前震に続いて震度7を2度経験し、前震で被害を受けた家屋の多くが倒壊しました。震度7を2度経験する観測史上初めての地震です。活動したのは、前震を起こした日奈久断層の北東に隣接する布田川断層東部です。布田川断層西部は、1889年明治熊本地震で活動したようで、残っていた場所に相当します。そういういう意味では、日奈久断層の西部の八代地区は、まだ注意が必要かもしれません。

 死者は、前震も含めて熊本県で50人の直接死となり、震災関連死は200名に及びました。また、全壊家屋数は8000棟を超えました。直接死50人のうち、37人は家屋の倒壊、10人は土砂災害によるとみられています。未明のマグニチュード7.3の直下地震で、老朽化した木造家屋の被害が顕著だったことなど、1995年兵庫県南部地震と共通する点が多く見られます。しかし、兵庫県南部地震では、直接死が5500人強、全壊家屋が約10万棟だったのに比べ、全壊家屋は1/10以下、直接死は約1/100でした。家屋被害の差は被災地域の人口の差と耐震化の進捗の成果、人的被害の差は前震の揺れで多くの人が自宅外に避難していたことが幸いしたと考えられます。このため関連死数が突出することになりました。熊本地震は、改めて人口集中の問題の大きさと直前予知の有用性を示唆しています。

 命を落としたのは耐震性のない建物と、震災後の劣悪な環境による関連死です。庁舎の損壊の有無で災害後対応も市町村で全く異なります。震災後に生活を維持できる日頃の備えを進めることが何より大切です。

福和 伸夫(名古屋大学減災連携研究センター、センター長・教授)
福和 伸夫
名古屋大学減災連携研究センター、センター長・教授
安全で安心な国・地域を実現するために地震災害軽減の研究を行う。各地の地震被害予測や防災・減災施策作りに協力、減災活動を通して新たな地域社会づくりを目指し、減災連携研究センターと減災館を中心に活動を展開している。

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