明治熊本地震(1889年)
専門家からのアドバイス
この災害で学ぶべき教訓は何か、専門家が解説します。
忘れてはいけない過去の地震の教訓
明治熊本地震は、1889年7月28日23時45分に発生したマグニチュード6.3の内陸直下の地震です。死者20名、建物の全潰239棟の被害があったと言われています。地震の6日後に大きな地震が起き、多くの余震が起きたこと、熊本城の石垣の被害や橋梁被害が顕著だったことなど、2016年4月に起きた熊本地震との類似性が指摘されています。過去の地震の教訓を後世に残していくことの大切さが改めて分かります。なお、被害分布が西に寄っていることから、熊本地震では活動しなかった布田川断層西部での地震だった可能性があります。また、この地震の揺れは、遠くドイツ・ポツダムの重力計で記録されたそうです。
この地震は、我が国の地震観測体制が形を整えて初めて起きた地震で本格的に被害調査がされた初めての地震でもあります。おそらくもっとも古い被害写真が撮られた地震で、11枚の写真が国立科学博物館のホームページで公開されています。我が国の地震研究は、1880年2月22日 に起きた横浜地震の後に設立された日本地震学会に遡り、この後、お雇い外国人教師を中心に地震研究が本格化しました。1885年には、東京気象台に地震計が設置され、全国的に地震の震度観測が開始されました。
ちなみに、1889年は、2月に大日本帝国憲法が公布され、7月に東海道線が全線開通した年で、被災地・熊本市が市制を引いたのもこの年の4月1日です。まさに、明治期に近代国家としての形を整えた時に起きた地震でした。
熊本は別府―島原地溝帯と呼ばれる活断層や火山が集中する場所です。17世紀初頭の地震や熊本地震も含め、土地の成り立ちを知ることで、災害が繰り返し起きることが分かります。
- 福和 伸夫
- 名古屋大学減災連携研究センター、センター長・教授
- 安全で安心な国・地域を実現するために地震災害軽減の研究を行う。各地の地震被害予測や防災・減災施策作りに協力、減災活動を通して新たな地域社会づくりを目指し、減災連携研究センターと減災館を中心に活動を展開している。
参考資料
- 国立天文台『理科年表 平成28年』(丸善出版)
- 毎日新聞「熊本地震 127年前の記憶、継承に失敗 当時の記録詳細」(2016年6月3日付)