御嶽山噴火(2014年)
2014年(平成26年)9月27日11時52分頃、長野・岐阜県境の御嶽山で噴火が発生した。土曜日の昼前、かつ紅葉シーズンにも当たったことから山頂付近にいた多くの登山客が噴火に巻き込まれた。飛散した噴石などで63人が死亡・行方不明となり、戦後最悪の火山災害となった。
これを受けて、気象庁では翌2015年(平成27年)から噴火の事実をいち早く知らせるべく噴火速報の情報提供を開始した。また、噴火警戒レベル1(平常)の下での噴火発生となったことから、この「平常」を「活火山であることに留意」と変更し、突発的な噴出現象に注意を呼びかける表現とした。
さらに、火山を持つ自治体などで登山届提出義務化などの対策も取られた。
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専門家からのアドバイス
この災害で学ぶべき教訓は何か、専門家が解説します。
突然の水蒸気爆発により戦後最悪の火山災害
2014年9月27日11時52分、長野・岐阜県境の御嶽山でマグマの熱が地下水などを沸騰させて発生する水蒸気爆発が起こり、40万トンの噴出物を放出した。登山者など63名が、噴石の直撃などで犠牲となった。
御嶽火山は、以前は有史以来の活動が認められないことから「死火山」に分類されていたが、1979年に水蒸気爆発を起こした。これが契機となって、約1万年前以降に活動した火山を「活火山」と呼ぶこととなり、休火山や死火山という呼称は廃止された。その後も1991年、2007年に小規模な水蒸気噴火を繰り返した。
マグマの熱による水蒸気発生の活性化やその移動に伴って、特有の低周波微動が発生することがある。2007年の噴火では、この微動が始まってから噴火まで約50日の猶予があった。しかし2014年では火山性微動が発生したのは噴火開始の直前だった。2014年の噴火時には噴火警戒レベルが1(活火山であることに留意)であったために、多くの登山者が訪れており、その結果、戦後最悪の火山災害を引き起こした。
降水量の多い日本の活火山は、いずれも水蒸気爆発を起こす危険性がある。登山時には必ずヘルメットを携帯し、警報発令や噴火開始の際には、一目散に下山する覚悟が必要だ。
- 巽 好幸
- 神戸大学海洋底探査センター 教授/センター長
- 水惑星地球の進化や超巨大噴火のメカニズムを「マグマ学」の視点で考えている。日本地質学会賞、日本火山学会賞などを受賞。主な著書に『地球の中心で何が起きているのか』『富士山大噴火と阿蘇山大爆発』などがある。