伊勢湾台風(1959年)
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専門家からのアドバイス
この災害で学ぶべき教訓は何か、専門家が解説します。
伊勢湾台風が知らしめた風台風が起こす高潮の脅威
和歌山県・潮岬への上陸時の最低気圧が929.5hPa、平均最大風速が33.5mという、非常に大型の台風でした。こうした風が強い台風では、海水が風に吹き寄せられて潮位が上がる高潮が脅威に。そして、伊勢湾の西側を沿うようにコースをとったことで、その脅威がより高まりました。また、名古屋港近くの貯木場では、保管されていた海外からの輸入原木が、人が住むエリアへ流される二次被害も起きました。建物を破壊したり避難民を巻き込んだりと、その破壊力は凄まじく、これも高潮と高波によって発生したのです。
また、国レベルで見ると、災害に対する法整備が今ほどなされていなかったことが、大きな被害となった要因と言えます。伊勢湾台風を受けて、国は1961年に災害対策基本法を公布。防災に関する責務の明確化や組織の設立などを規定し、以降の防災に役立てています。
現代では、港湾地区には大量のコンテナなどが集積されているため、その近辺で生きる人は、高潮への危機意識を持つべきでしょう。ただその一方で、一つの災害に固執するのも危険です。「海が近いから高潮に気をつけよう」と意識すると、地震などほかの災害を忘れがちになります。ですので、日頃からいろんな危険を意識する必要があります。
最後に、命を守ることが最も大切ですが、高潮や洪水などの水災害に対しては、その後の生活を考えると、財産を守ることも無視できません。電化製品といった、濡れると困るものを上階へ移動させるなど、未来を生きるための対策をしておけば、「次は自分が避難する番だ」という気持ちを持ちやすいかもしれません。
- 井口 隆
- 国立研究開発法人 防災科学技術研究所 社会防災システム研究部門 客員研究員 博士(理学)
- 地すべりや山崩れなどの土砂災害を専門に研究し、それと切り離すことができない台風などについての考察も行ってきた。定年後も、災害に関する研究を通して、防災に対する啓蒙活動を行っている。